ICT教育と日本語入力

スマートフォンは新しい「読み書き」の道具

「読み書き」は誰もが獲得することが望まれる社会的なスキルです。どの国でも教育の基礎には「読み書き」があります。

ところで近年では「読み書き」は紙と鉛筆だけではなく、パソコンの”ディスプレイとキーボード”や、スマートフォンやタブレットの”スクリーンとキーボードアプリ”で行うものにもなってきています。

また近年の教育改革においては、知識伝達型授業から脱却し、学生からのアウトプットを重視するアクティブラーニングが大きな潮流となってきています。

そのアクティブラーニング用のアプリでは、学生が自らの考えを入力し、先生の元へ集約される機能が当たり前になってきました。そして、その場合の文字入力はキーボードアプリが担うことになります。

* スマートフォンを活用するアクティブラーニングアプリ(すべて文字入力を活用するアプリです)
 Clica respon MOVARI C-learning Handbook ロイロノート事例


日本の現状

しかしキーボードアプリの漢字変換が、教科書や黒板に書かれた漢字を変換できないようなレベルであれば、アクティブラーニング用のICTツールがどれだけ進歩しても期待されるような成果は上がりません。

実際問題として、数年前までは漢字変換の評価が高かったGoogle提供のキーボードアプリも、開発拠点が日本からアメリカに移り、以前は変換できた多くの語句が変換できなくなりました。(たとえば雅語関連の変換が弱いだけでなく「雅語」という言葉自体が変換できず、「唐変木」や「朴念仁」といった常用漢字も変換できなくなっています)

その一方、アメリカでは「スワイプ入力」という従来よりも格段に入力効率にすぐれたソフトウェアキーボードが開発され、GoogleやMicrosoftを含めた複数の企業が無償提供しています。

また中国でもキーボードアプリの開発に力を入れていて中国語の「スワイ入力」他、アルファベット系の言語用にも独自で「スワイプ入力」を開発し、各国に提供しています。

* スワイプ入力についてはこちらをご覧下さい
 スマホの入力でも日本はガラパゴス、世界は《ひと筆書き》入力が主流だ

* アメリカや中国ではキーボードアプリに盛んな開発投資を行っています。


このようにアメリカや中国では競い合ってキーボードアプリが開発され、そのテクノロジーがカバーする言語圏では、現状で最も入力効率の高いキーボードアプリが手に入る状況になっています。

しかし日本語の場合、言語の特性上「スワイプ入力」が不向きで、Google等のグローバル企業は日本語版の「スワイプ入力」は開発していません。また日本独自のフリック入力は日本にしか通用しませんが、「スワイプ入力」は欧米圏の言語や・中国語・アラビア語など殆どの言語に通用するため、グローバル企業の技術開発における日本語の優先順位は低下しています。

また日本の労働生産性は先進諸国と比較して低位にあり、また少子化に伴い、世界でも最も早いペースで生産性人口が減少する時代に入っています。こうした状況下で、これからの子供たちは、ICTを活用して学び、社会で活躍できる力を身に付けることが期待されています。

しかし日本語入力という「読み書き」の基盤が他の言語にくらべて劣化してゆけば、学びの場面でも、卒業後の社会活動でも、他国と差がついてしまい、社会の活力や生産性の低下にも繋がってゆく懸念があります。

iPhoneやHuaweiのスマートフォンなど、グローバルに販売される製品は、世界と同じものを日本でも買えますが、日本語という言語の問題に関してはアメリカや中国の成果に頼ることができず、待っていればいつか他の国が解決してくれるということもありません。日本は自助努力でスマートフォンやタブレットをより良い「読み書きの道具」にしてゆく以外にはないことになります。


「教育支援」としてのキーボードアプリ

大学だけでなく「都立高校全校で個人スマホを授業活用」など、高校でも個人のスマートフォンを活用した授業活用が進められています。この趨勢はこれからも拡大してゆくと見込まれます。すでに多くのアクティブラーニング用のアプリやサービス存在しますが、今後はさらにこうした分野への参入が増えてくることでしょう。

しかし、どのようなアプリやサービスを使用しても、スマートフォンやタブレットにおいて、言葉を綴って表現し、考えを伝えるためにはキーボードアプリを必要とします。

そのキーボードアプリが外国企業まかせで、常用漢字が変換できなかったり、英語や中国語には多大な開発投資が行われる一方で、日本語に適した入方方法の開発がおざなりにされる状況がこれからも続いてゆけば、本来見込まれるはずの教育効果の水準に到達しない恐れがあります。

このような状況に鑑み、アルテ日本語入力キーボードではより効率的な日本語入力の実現し、日本語入力環境の向上に取り組んでいます。また教育機関を対象として無償(無課金)でご利用いただける取り組みを行っています。
無償化認証は学生の方だけではなく、教職員の方など、学校関係者の方にもご利用いただけますので、この取り組みにご関心をお持ちいただければと幸いです。


<関連リンク>

 アルテ日本語入力キーボードの取り組み
 日本語とスワイプ入力